パリで評判のレストランは星の数ほどあれど、日本人が厨房にいない所はないのではと思えるほど活躍目覚しいジャパニーズ・シェフたち。知り合いのレストランオーナーからも「日本人は手先が器用だし、真面目で仕事ぶりも素晴らしいよ!」と絶賛の声が多く、なんだか自分のことのように嬉しいものです。
2012年にオープンして以来、パリで予約の取れないビストロの仲間入りを果たした「Abri」も、ロブションやタイユヴァン、アガペを渡り歩いた実力派日本人シェフのお店で、食通フランス人からぜひ行くべし!と噂を聞いて以来ずっと気になっていたお店でした。やっと重い腰を上げて予約の電話をすると、「予約は12:30からか13:30からのみです」と言われてビックリ。食事はゆっくり時間をかけて楽しむのが基本のフランスで、このきちんとした二回転・・・強気です。うっかり通り過ぎてしまうほど目立たない小さなお店の中では、面積のほとんどを占めるオープンキッチンの周りに数えるほどのテーブルと椅子が置かれ、中央でシェフが黙々と料理を作り続けるその姿はまるで、サムライと見まごうほど??
素材の味を活かしてシンプルながらも、見えないところで丁寧に作りこまれたお料理には心なしか日本の侘び寂びが感じられるようで、唐突に雑誌・クウネルや天然生活を思い出しました。最近のアンティーク界でも主流になりつつある、和のセンスに西洋のクリエイティビティを融合したようなあの雰囲気。
メインの子羊ローストは恐ろしいほどキュイッソンの加減が完璧で、淡々としていながらも仕事へのプライドの高さを感じさせるシェフの技を目の当たりにしました。
雪国の風車のような・・・ミルフィーユの上に飾られた、パリパリの林檎チップスが美味しかったです。最後のデザートまでしっかり作りこんで、名店の面目躍如。
料理はお任せの前菜2品、メインは肉か魚を選択してデザートもお任せというシステムなのですが、食事中にふと気づくと隣のテーブルの人が食べているものが私たちとは違う!どうやらメイン以外はそれぞれのテーブルに異なった料理を出しているようです。それが食材の節約のためなのか、遊び心なのかは分かりませんが、上手い工夫だな〜と唸ってしまいました。食い意地の張った私みたいな人は、隣が食べていた物が気になってまたお店に来てしまうことでしょう・・・
いくら美食の国と言われていても、近年の不況で余裕が無いフランスの飲食業界。シェフも手を動かすだけでは足りず、頭も使える人でないと生き残っていけないこの状況で、外国人として頑張っている若い日本人は本当に立派だなとつくづく感心しました。お料理が美味しかったことはもちろん、随所に感じさせる反骨精神にも心くすぐられたAbriです。
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